Innovation

2)シンガポール政府による初の人工知能(AI)国家戦略と、「スマートシティ・不動産スタートアップ」最前線。

前回に引き続き、11/13に発表されたNational AI Strategyの重点分野のひとつ、スマートシティ・不動産をとりあげます。

National AI Strategyの中では、スマートシティ・不動産分野の取り組みとして、「シームレスで効果的な自治体サービス」が挙げられています。具体的には3つ。1つ目は「AIを用いたチャットボット」です。地域で問題があったときにチャットで報告でき、問題解決のためにどのようにしたらよいかをチャットボットがガイドします。2つ目は「不動産管理」。センサーからデータを集め、AIアルゴリズムを用いそのデータを分析することで、エレベーター故障などのトラブルが起きそうな時に故障を予測。故障が起きる前に解決できるようにします。3つ目は「居住環境の改善」です。住民がどのようにファシリティを利用しているか利用状況をモニタリングし、そのデータを住民と一緒に共有することで、住民のニーズにあったファシリティの建設計画を立てます。

地域や住居の問題には関係者が多く、誰が何を解決できるのかが分からないという状況も起きやすい中で、担当者をすぐ特定。住民と担当者が一緒になって問題解決に向かうことを可能にするこのようなテクノロジーは、都市を住みやすくするために重要といえるでしょう。

そんなシンガポールで注目のスマートシティ・不動産スタートアップ3社を紹介します。

Limestone Network
-Founded:2018
-Funding:N/A
-Investors:Tribe Accelerator

Limestone Networkはブロックチェーンを利用したスマートシティソリューションを提供するスタートアップで、現在はカンボジアのプノンペンで実証プロジェクトを実施中とのこと。このプロジェクトでは、そのエリアの居住者と勤務者全員がLimestoneのモバイルアプリをダウンロードし、デジタルパスポートに登録。登録の過程で犯罪歴などの確認が行われ、問題なければパスポートが発行され、ブロックチェーンネットワーク内に登録されます。このデジタルパスポートを用いて、域内の建物に出入りしたり、モバイルウォレットなどの機能を利用することが可能になります。収集された個人情報をどこまで公開するかは登録者本人が決めることができ、データポータビリティにも配慮した仕様になっています。将来的には、たとえば電話会社会社などがこのデータを利用できるようにして、直接簡単にユーザー登録ができるようになるなど、住民情報を他サービスと相互利用することも考えられます。因みに、Limestone Networkに出資しているTribe Acceleratorは、シンガポール政府からもサポートを受けているブロックチェーンに特化したアクセラレーターです。

Igloohome
-Founded:2015
-Funding:USD 16.3M
Investors:Singtel Innov8, Seeds Capital, Great Noble International, etc.

IgloohomeはIoTを用いたスマートロックを製造・販売しているスタートアップです。ドアに取り付けるスマートロック、南京錠やキーパッドタイプのロックのほか監視カメラなども製造しており、スマホアプリで入退出のモードを選んだり、ロックの解除ができたり、アクセスログを見ることができます。物件オーナーが部屋へのアクセスを管理したり、AirBnBのような一時的な入退出などフレキシブルに鍵の管理ができることが特徴です。物件内見のために一時的な許可を出したり、住民だけに鍵のアクセス権を付与するなど、さまざまな利用シーンが考えられそうです。このプロダクトはシンガポール最大手の通信事業者であるSingTelの社内ハッカソンから生まれたもので、オーストラリアやアメリカから呼ばれた25チームの中を勝ち抜いたアイデアだったということです。実は、ハッカソン中に、最初のユーザー、クラウドファンディングとインベスターからの出資あわせて2万ドルを受けてしまい、チームはハッカソンの結果にかかわらず起業するつもりだったということ。すでに100カ国以上への出荷実績があります。

Hmlet
-Founded:2016
-Funding:USD 48M
-Investors:Sequoia Capital India, Mitsubishi Estate, Burda Principal Investments, etc.

最後に、コリビングに特化した物件検索サイトを運営するHmletを紹介します。若い社会人をターゲットユーザーとしており、ロケーションや価格だけでなく、ユーザーの価値観や好み、ライフスタイルに最適化されたシェアルームとマッチングが可能です。シンガポールでは日本と異なり、一人暮らし用の物件がとても少なく、ほとんどの人がルームシェアをすることから、部屋だけではなくルームメイトも部屋探しの重要な要素です。ライフスタイルという新しい軸を部屋探しに持ち込み、ローカル住民だけでなくインターナショナルにユーザーを惹きつけるサービスとして成功しています。現在、シンガポールだけでなく、東京、香港、シドニー、メルボルンでもサービスを展開。東京が今後より一層グローバルになっていく中で、コリビングを通じさまざまな人と出会える物件探しは新しいトレンドになるかもしれません。


スマートシティや不動産にテクノロジーが接続し続けることで、課題解決をスピードアップしたり、複雑化する前に流れを解決していくことで地域に貢献。そのひとつの結果として街の魅力が際立ち、来街者増にも繋がっていくことが期待できます。また、シンガポールは人の流動性と多様性が極めて高く、数ヶ月〜数年といった単位で多くの人が諸外国から訪れビジネスに関わっていきます。そのような新しい住み方・働き方を支える上でも、このようなテクノロジーは大きな役割を果たしそうです。実証研究や運用の中から、今の時代に最適な形を見つけつつ、商習慣が異なる日本や東南アジアまで様々な形で影響を与えていってくれることを期待しています。

Writer:西村菜美(NUS) 
Editor:伊藤隆彦(One&Co)

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