Innovation

シンガポールフィンテックが拓く新たな世界

国際金融センターのシンガポールに見る、フィンテックの潮流とは。

11/11-15の5日間、Singapore Fintech Festivalがシンガポールエキスポで開催されました。Fintech Festivalはフィンテックに特化したシンガポール最大のカンファレンスと展示会で、世界中から金融機関、技術者、研究者やスタートアップが集まります。2018年の参加者は4.5万人だったということからも、その規模がわかります。会期中は、フィンテック企業がオープンラボを開催するなど、カンファレンス会場以外でもさまざまなイベントが開催され、シンガポール中がフィンテックを体験できる場所になります。

2019年のFintech Festivalでは、いくつかの重要なアナウンスが行われましたが、特にスタートアップに関連した大きな動きとして、APIXというプラットフォームが発表されました。APIXは、金融機関とフィンテック企業のコラボレーションを推進するために作られた、グローバルなマーケットプレイスと実証実験を行うためのプラットフォームです。金融機関からフィンテックスタートアップまで、さまざまな機関・企業がこのプラットフォームに参加し、デジタルトランスフォーメーションやファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)を実現することを目指します。発表では実際にこのプラットフォームを利用したコラボレーションの事例として、シンガポールのフィンテックスタートアップであるActive.aiとインドのAxis Bankの協力事例なども紹介されました。

(このデジタルトランスフォーメーション、そしてファイナンシャル・インクルージョン、これまでの金融ではサービスが届かなかった人が金融サービスにアクセスできるようになり、その恩恵を受けられるようになることは、今回紹介するスタートアップにも共通のテーマとなっています)

それでは、今回も注目のスタートアップ3社を紹介していきます。

1)CredoLab
-Founded:2015
-Funding:USD 3.1M
-Investors:Walden International, Fintonia Group, FORUM etc.

CredoLabは今回のFintech FestivalのFinTech Award、ASEAN Open部門で1位を受賞したシンガポールベースのスタートアップです。スマートフォンのメタデータを利用し、AIによってメタデータを分析することで、銀行グレードのデジタルスコアカードを開発しています。すでに15か国以上、1500万件のデータセットを保有しており、リアルタイムでクレジットスコアを高い正確性で予測することが可能です。たとえば、保険・ローン比較サイトのGoBearと提携しており、オンラインクレジットカードをCredolabの審査を利用して申し込むことが可能です。ユーザーはスマートフォンの利用履歴をもとに審査されます。

2)SingX
-Founded:2014
-Funding:USD 4.5M
-Investors:Unnamed investors

SingXはオンライン国際送金プラットフォームです。一般ユーザーと中小企業を主なターゲットユーザーとしており、シンガポールからの国際送金の費用を、従来の銀行を利用した送金と比較して90%安くすることをうたっています。ファウンダーのAtul Gargは、インド出身でシンガポールで25年以上銀行での勤務経験をもつ、バンキング・ペイメントのプロフェッショナルです。銀行での勤務経験の中で、もっと変えられることがたくさんある、と感じ、SingXを起業したとのこと。SingXを国際送金におけるAirBnBのようなプラットフォームにしたい、とインタビューに対し語っています。今回のFintech Festivalでは同じく国際送金プラットフォームのイギリスのスタートアップTransferWiseがAwardを受賞しており、オンライン国際送金の分野は競争が激しくなりそうです。

3)FundedHere
-Founded:2015
-Funding:USD 1.3M
-Investors:Individual investors

最後に、スタートアップが投資を集めるためのクラウドファンディングプラットフォームを運営するFundedHereを紹介します。この会社が運営するプラットフォームFundedXは、東南アジアのスタートアップに投資できる、民間の証券取引所という位置付けです。すでに27のプロジェクトがファンディングを実施しています。現在は、投資家が上場や買収までの長い期間、大きなリスクをとって投資を行っていますが、プラットフォームでスタートアップの株を取引できるようにすることで、投資家が適切なタイミングで株式を売却できるようになります。このことで、より多くの投資家をスタートアップ投資に呼び込むことができるようになると期待されています。

以上、個人が利用するサービスから法人向けサービスまでスタートアップを見てきました。Fintechはとても幅広く、今回紹介したのは多くのスタートアップの中のごく一部ですが、金融サービスのデジタル化によって、より多くの人がサービスへとアクセス可能になり、より多くの人や企業の可能性を開くものといえそうですし、フィンテックを横展開させた想像すら出来ないイノベーションも期待できそうです。

Writer:西村菜美(NUS) 
Editor:伊藤隆彦(One&Co)

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